脊髄損傷

脊髄損傷による後遺障害

脊髄損傷による後遺障害脳と同じ中枢神経であり、損傷を受けると回復が非常に困難な脊髄。自賠責保険では「神経系統の機能障害」として、発症部位と症状に合わせて第1級1号、2級1号、別表第2の3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号の7つを後遺障害等級として定めています。

自賠責保険における後遺障害等級は、労災が定める後遺障害等級や認定基準を流用して定められていますが、脊髄損傷については「神経系統の機能又は精神の障害」という項目の等級へ括られています。この項目について認められる等級が前述の等級で、その症状の程度を表す表現として、労災も自賠責も以下のように区別しています。

 
脊髄損傷の認定可能性のある等級
等級 症状
1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要する
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの

脊髄損傷が後遺障害認定された場合の賠償金額の例

40歳(就労可能年数27年)で

年収600万円の会社員の場合

※ 入通院慰謝料、休業損害、入院雑費、治療費・交通費等の金額が増額される可能性があります。
※ 具体的な事情によっては、金額が大きく異なりうるものです。

  •  基礎収入:600万円
  •  就労可能年数に対応するライプニッツ係数:14.643
1級1号が認定された場合
具体的な症例 高度の四肢麻痺・対麻痺(両下肢のみの麻痺)がある状態。もしくは、中程度の四肢麻痺・対麻痺があり、食事・入浴・用便・更衣などの日常生活を行うのためには常に介護を必要としている状態
後遺障害の慰謝料 2800万円
後遺障害の逸失利益 8785万8000円
=600万円(年収)×1(労働能力喪失率)×14.643(ライプニッツ係数)
合計 1億1585万8000円
2級1号が認定された場合
具体的な症例 中程度の四肢麻痺がある状態。もしくは、軽度の四肢麻痺または中程度の対麻痺があって、食事・入浴・用便・更衣などの日常生活を行うのためには常に介護を必要としている状態
後遺障害の慰謝料 2370万円
後遺障害の逸失利益 8785万8000円
=600万円(年収)×1(労働能力喪失率)×14.643(ライプニッツ係数)
合計 1億1155万8000円

3級3号が認定された場合
具体的な症例 軽度の四肢麻痺や中程度の対麻痺があり、食事・入浴・排泄・更衣などの日常生活を行うことが可能だが、神経系統の機能または精神に著しい障害を残しているため、仕事を継続することができない状態
後遺障害の慰謝料 1990万円
後遺障害の逸失利益 8785万8000円
=600万円(年収)×1(労働能力喪失率)×14.643(ライプニッツ係数)
合計 1億775万8000円

5級2号が認定された場合
具体的な症例 軽度の対麻痺、1下肢の高度の単麻痺があり、非常に簡単な仕事のほかには就労ができない状態
後遺障害の慰謝料 1400万円
後遺障害の逸失利益 6940万7820円
=600万円(年収)×0.79(労働能力喪失率)×14.643(ライプニッツ係数)
合計 8340万7820円

7級4号が認定された場合
具体的な症例 1下肢の中等度の単麻痺があり、簡単な仕事のほかには就労ができない状態
後遺障害の慰謝料 1000万円
後遺障害の逸失利益 4920万480円
=600万円(年収)×0.56(労働能力喪失率)×14.643(ライプニッツ係数)
合計 5920万480円

9級10号が認定された場合
具体的な症例 1下肢の軽度の単麻痺があり、通常の仕事に就労することはできるが、就労可能な職種の範囲が少ない数に制限されてしまう状態
後遺障害の慰謝料 690万円
後遺障害の逸失利益 3075万300円
=600万円(年収)×0.35(労働能力喪失率)×14.643(ライプニッツ係数)
合計 3765万300円

12級13号が認定された場合
具体的な症例 痛み、しびれ、麻痺、めまい、難聴等の神経症状を残す障害の存在が医学的に証明でき、本人が訴える自覚症状と、外傷性の画像所見および神経学的所見の両方が間違いなく一致している状態
後遺障害の慰謝料 290万円
後遺障害の逸失利益 1230万120円
=600万円(年収)×0.14(労働能力喪失率)×14.643(ライプニッツ係数)
合計 1520万120円

脊髄損傷の種類

脊髄は脳から背骨の中を通って伸びている中枢神経でです。交通事故などで脊髄が損傷されると、損傷部位より下部へ脳からの指令が伝達できなくなり、同時に損傷部位から下の信号を脳へ伝えることができなくなります。このことにより、手が麻痺するといった障害から、歩行障害、呼吸筋が麻痺することによる人工呼吸器が必要になったり、排便や排尿などの排泄機能などのさまざまな障害が生じます。

脊髄を損傷してしまうと、その後に回復することは困難であり、後遺症が残ります。


脊髄損傷の分類

 完全損傷

損傷した脊髄の位置より下の部分を運かすこと、感覚を感じることが全て麻痺します。

 不全損傷

損傷した脊髄の位置より下の部分を運かすこと、感覚を感じることが部分的に麻痺します。症状の度合いや範囲は、体の左右・上下で異なることが多いです。

 中心性損傷

損傷直後(事故直後)は四肢麻痺(上肢及び下肢の麻痺)を発症しますが、時間が経つのに合わせて下肢から回復していき、両手のしびれや痛み、手指を細かく動かすのが困難になるという症状を残すことが多いとされています。


麻痺の種類と程度

脊髄を損傷したことで身体の四肢(両手両足)や、どこか一部に麻痺が残ってしまった場合、麻痺がどれだけの範囲まで拡がっているか(四肢麻痺・片麻痺・単麻痺・対麻痺)、麻痺の強さはどの程度か(高度・中等度・軽度)という症状に合わせて後遺障害等級の認定基準が決定します。

麻痺の種類
四肢麻痺 両手両足すべての麻痺
片麻痺 体の片側の手足の麻痺
単麻痺 片方の腕または足の麻痺
対麻痺 両方の腕または両方の足の麻痺

麻痺の程度

麻痺の程度については、高度・中等度・軽度の3つに分けられます。

高度の麻痺

障害のある上肢(腕)または下肢(足)を動かしたり、動きを止めておくことがほぼ不可能となり、運動性・支持性がほとんど失われた状態。物を持ち上げて移動させたり、歩いたり起立しておくといった基本動作ができない程度の麻痺を高度の麻痺と呼びます。

中程度の麻痺

障害のある上肢(腕)または下肢(足)を動かしたり、動きを止めておくことが困難になり、基本動作がかなり制限されてしまう程度の麻痺を中程度の麻痺と呼びます。

軽度の麻痺

障害のある上肢(腕)または下肢(足)を動かしたり、動きを止めておく機能が多少失われており、基本動作は行えても細かな動作ができなかったり、素早くできなくなる程度の麻痺を軽度の麻痺と呼びます。


脊髄損傷を立証するために重要なポイント

早期から高精度のMRI・CTスキャンなどで画像撮影をしておきましょう

MRI脊髄の損傷を立証することは非常に困難です。医師による後遺障害診断書に「脊髄損傷」と記載されていても、必要な立証ができなければ、後遺障害認定を受けることができないのが現実です。それでは、どのように立証すればよいのでしょうか。

まず、レントゲン画像やMRI・CTスキャンなどを用いて画像所見を用意することが必要です。損傷を受けた直後でなければ写らない場合もあるため、事故後はすぐにこれらの画像を撮影しておくのが大切です。

また、画像の質によっては不鮮明な所見となってしまう恐れがあるため、なるべく最新の設備が充実している医療機関を選び、高品質な画像を作成してもらえるように担当医へ伝える必要があります。

さまざまな神経症状テストを受けておきましょう

神経症状テスト脊髄が損傷したことで神経症状に影響が出ていることも、客観的に分かる事実として資料へ記載しておく必要があります。そのためにはさまざまな神経症状テストを受けるのが大切です。

神経症状テストには、力がどの程度低下しているかを調べる徒手筋力テストや、麻痺によって筋力が低下し、筋肉が細くなったことを調べる筋委縮検査、ヒザなどをゴムハンマーで叩き、正しく反射が行われるかを調べる病的反射検査などがあります。

もちろん、これらのテストをすべて受けたらよいというわけではなく、発症している症状に合わせて的確な検査を行い、その結果を明確に診断書へ記載してもらうことが重要なポイントとなります。

必ず専門医の診療を受けましょう

交通事故によるケガの中でも、脊髄の損傷は非常に重い症状を残しますが、後遺障害等級認定を適正に受けるための立証は非常に困難なものになっています。先に述べた2点のような、早期の段階からの画像所見、神経症状テストが大切です。

特に中心性脊髄損傷は「そのうちもっと改善するだろう」というように誤認して、見落とされやすい病状です。すべての手続きが終わってから後悔しないためにも、脊髄損傷に詳しい医療機関・専門医を選び、精度の高い検査・治療・記録を心がける必要があります。

脊髄損傷で悩んでいる被害者・家族の方へ

弁護士日本全国では毎年5,000人以上の脊髄損傷患者が発生しており、そのうちの4割以上が交通事故を原因としています。

交通事故で脊髄を損傷するのは非常に多いことなのです。しかし、脊髄損傷はさまざまな症状が発症するために「こうなれば脊髄損傷である」ということがすぐには分からず、加害者の保険会社が「その症状は一般的な脊髄損傷とは違う」というようなことを主張してくることがあります。

適正な結果を導き出すためにも、当事務所では医療機関・専門医の協力を得ながら症状を合理的に説明し、等級認定のサポートおよび、正当な損害賠償を受けられるようにフルサポートいたします。お困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

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