四肢の骨折の後遺障害について 投稿日:2020年4月27日 カテゴリ:未分類 四肢骨折は交通事故で多く見られますので,その後遺障害事例を紹介いたします。 先ず,四肢とは上肢の長管骨では,上腕骨,橈骨,尺骨があります。 下肢の長管骨では,大腿骨,脛骨,腓骨があります。 これらの長管骨の骨折するケースが多くあります。 骨折後の関節の可動域制限が発生するのは,骨端部を骨折した場合に関節(肩関節,肘関節,手関節,股関節,膝関節,足関節)内にかかる骨折が発生するために,骨折部の変形・不正癒合のために関節が動きにくくなるためです。それに伴って関節痛が残る場合が多くあります。 また,ギプス固定後に関節が拘縮して可動域制限が起こります。 骨幹部骨節(骨の中央部付近の骨折)の場合は関節部にかからない骨折のために関節の可動域制限は発生しません。しかし,骨癒合が完成せずに偽関節となる場合がたまにあります。 その他の後遺障害としては,長管骨の変形,下肢の短縮障害があります。 また,脛骨・腓骨の近位端部を骨折した場合に同時に腓骨神経を損傷すると足関節が下垂足となる場合があります。 膝関節の前十字靭帯・側副靭帯・半月板の損傷や断裂があると膝関節の可動域制限及び膝関節痛,動揺関節が残る場合があります。 事例1:バイクで直進中に交差点で左折車に巻き込まれ左脛骨果部骨折(脛骨遠 位端骨折)し,金属プレートで固定手術後ギプスをしました。 リハビリを1年間しました。また,抜釘もしましたが左足関節の可動域が 制限され痛みもあります。 後遺障害は何級が見込まれるでしょうか。 回答: 骨折の手術をして抜釘もしているので症状固定の時期です。 主治医に左足関節の可動域の測定をしてもらい後遺障害診断書を作 成してください。 後遺障害の等級は下記の基準で決められます。 ①「単なる機能障害」12級7号は,足関節の屈曲・伸展の角度を測定 して決めます。 患側(負傷した足関節)の可動域が,健側(負傷していない足関節) の可動域の4分の3以下に制限されている場合です。 例:健側の屈曲・伸展の可動域が60度の場合は,健側の4分の3以下 になるのは患側の可動域が45度以下になる場合です。 注1:関節の可動域の測定値は他動値を採用します。 但し,神経損傷により可動域制限が生じている場合は自動値を 採用します。 注2:関節の可動域の比較は他動値で健側の可動域と患側の可動域を 比較しますが,健側の足関節に既往障害がある場合には,参考可動 域角度と比較します。 足関節の主要運動は,屈曲・伸展です。 足関節の参考可動域角度は65度です。 屈曲 45度 伸展 20度 ②「著しい機能障害」10級11号は,患側の可動域が健側の2分の1 以下に制限されている場合です。 または,人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節の内,その可動域が 健側の可動域角度の1/2以下に制限されていないものをいいます。 例:健側の可動域が70度の場合は,健側の2分の1以下の35度以 下となる場合です。 ③「関節の用を廃したもの」8級7号は,関節が強直したもの,関節の 完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態にあるもの,あるいは人工関節・ 人工骨頭を挿入置換した関節が,その可動域が健側の可動域角度の1 /2以下に制限されたものをいいます。 注3:足関節の可動域制限の原因が,骨折の変形癒合,関節面の不正癒 合,靭帯損傷,神経麻痺によることがレントゲン,CT,МRI,神 経学的検査などで他覚的に証明できることが必要です。 これから,以下に説明します事例でも可動域制限の原因が,骨折した骨 の変形癒合・不正癒合や関節の拘縮及び神経損傷が医学的の説明できる 場合に認定されることにご留意ください。 事故後に治療してレントゲン・МRI・CT・神経学的検査などをして も異常がなく治っている場合には,可動域制限の原因が証明・説明できな いことから後遺障害の認定に至らない場合があります。 事例2:自転車に乗っていて車と衝突して右脛骨近端骨折をして金属プレー トで骨折の固定術をしましたリハビリをして手術より1年経過しまし たが右膝関節の可動域制限と痛みが残っています。 抜釘はまだしていませんが後遺障害は何級に該当するのでしょうか。 回答:右脛骨の骨接合手術後1年経過していますので症状固定の時期です。抜釘の手術後に後遺障害診断書を作成してください。 膝関節の主要運動は,屈曲・伸展です。 参考可動域角度は ・屈曲 130度 ・伸展 0度 右脛骨の変形癒合が認められる場合は,膝関節の患側(右膝関節)の可動域が健側(左膝関節)の可動域の3/4以下に制限されていれば,12級7号「膝関節の機能障害」として認められる可能性が大です。 尚,膝の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。 また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域 の3/4以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」 に該当しませんが,右膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残 すもの」として12級13号が認定される可能性が大です。 膝関節の患側(右膝関節)の可動域が健側(左膝関節)の可動域の1/2以下に制限されていれば,10級11号「膝関節の著しい機能障害」として認められる可能性が大です。 尚,右膝の痛みは原因が同じなので10級に含まれます。 事例3:交差点信号青でバイクに乗っていて直進中に対向車の車が右折して きて衝突した。 右大腿骨転子部骨折したのでネイルプレート法で固定手術を受けま 。した。 主治医は手術から1年になるので抜釘をすると言っています。 右股関節の可動域制限と痛みがあります。 予想される後遺障害は何級程度でしょうか。 回答:手術後1年経過していますので症状固定の時期です。抜釘をしたら 医師に後遺障害診断書を作成してもらってください。 股関節の主要運動は,屈曲・伸展と外転・内転があります。 右股関節(患側)の主要運動のいずれか一方の運動の可動域が,健側 (左股関節)の可動域の3/4以下に制限されていれば,12級7号「股 関節の機能障害」として認められる可能性が大です。 尚,股関節の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。 また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動域 の3/4以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の機能障害」 に該当しませんが,膝関節痛については「局部に頑固な神経症状を残す もの」として12級13号が認定される可能性が大です。 右股関節(患側)の主要運動のいずれか一方の運動の可動域が,健側 (左股関節)の可動域の1/2以下に制限されていれば,10級11号 「股関節の著しい機能障害」として認められる可能性が大です。 尚,股関節の痛みは原因が同じなので10級に含まれます。 事例4:バイクで道路直進中,対向車の車がセンターラインをオバーしてきて 衝突しました。 私は,右大腿骨の中央部付近を骨折し髄内釘を入れて固定しました。 1年後に抜釘をしました。主治医からはきれいに骨癒合していると言 われましたが,骨折部に痛みが残っています。 後遺障害が認められるでしょうか。 回答:大腿骨の中央部付近の骨折は大腿部骨幹部骨折と言います。 変形もなく骨癒合しているとのことから通常では痛みの残る原因が 説明できませんので,後遺障害としては非該当の可能性があります。 もし,痛みが後遺障害として認められたとしても14級9号「局部に 神経症状を残すもの」と判断します。 事例5:自転車で横断歩道を横断中,左から直進してきた車に跳ね飛ばされて 左大腿骨頸部骨折をしました。 入院した病院の医師は年齢が70歳だから人工骨頭置換手術をすると 言われ手術しました。 手術後約1年リハビリをしましたが主治医から症状固定の時期です と言われました。 人工骨頭にしましたが左股関節の動きが悪く痛みも残っています。 後遺障害はどの程度の等級が認められるのでしょうか。 回答:主治医の言われるように症状固定の時期です。 左股関節の可動域角度を測定しないと等級の判断は出来ません。 ただ,人工骨頭置換しただけで「股関節に著しい障害を残すもの」と して10級11号は認定されます。 それに加えて, 股関節の主要運動は,屈曲・伸展と外転・内転があ りまが。 左股関節(患側)の主要運動のいずれか一方の運動の可動域が,健側 (右股関節)の可動域の1/2以下に制限されていれば,「1下肢の3 大関節中の1関節の用を廃したもの」として8級7号認められる可 能性が大です。 尚,股関節の痛みは原因が同じなので8級に含まれます。 事例6:交差点の横断歩を歩行中,左折してきた車に衝突されて右上腕骨外科 頚骨折をしました。 入院してプレートで固定手術後にリハビリを行いました。 手術1年後に抜釘しましたが右腕が肩ぐらいまでしか上がらず。右 肩関節の可動域制限と右肩の痛みあります。 後遺障害は何級が予想されますか。 回答:手術後1年経過していますので症状固定の時期です。 医師に後遺障害診断書を作成してもらってください。 肩関節の主要運動は,屈曲(前方挙上)と外転(側方挙上)・内 転があります。 参考可動域角度は ・屈曲 180度 ・外転 180度 ・内転 0度 右肩関節(患側)の主要運動のいずれか一方の運動の可動域が,健 側(左肩関節)の可動域の3/4以下に制限されていれば,12級7号 「肩関節の機能障害」として認められる可能性が大です。 尚,右肩関節の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。 また,右肩関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動 域の3/4以下に制限されていない場合は12級7号「肩関節の機能障 害」に該当しませんが,右肩関節痛については「局部に頑固な神経症状 を残すもの」として12級13号が認定される可能性が大です。 右肩関節(患側)の主要運動のいずれか一方の運動の可動域が,健側 (左肩関節)の可動域の1/2以下に制限されていれば,10級11号 「肩関節の著しい機能障害」として認められる可能性が大です。 尚,肩関節の痛みは原因が同じなので10級に含まれます。 事例7:道路横断中に左方より直進してきた車と衝突して,左上腕骨顆上骨折 をしました。 救急車で病院に入院してプレートで固定する手術を受けました。術 後リハビリを1年続け抜釘をしましたが,左肘関節の可動域制限と痛 み手指のシビレが残っています。 回答:左肘関節と右肘関節の可動域を主治医に計測してもらって後遺障害診 断書を作成してください。 肘関節の主要運動は屈曲・伸展です。 参考可動育角度は ・屈曲 140度 ・伸展 0度 左肘関節(患側)の主要運動の可動域が,健側(左肩関節)の可動域の 3/4以下に制限されていれば,12級7号 「肘関節の機能障害」として認められる可能性が大です。 尚,左肘関節の痛みと手指のシビレは原因が同じなので12級に含ま れます。 また,左肘関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動 域の3/4以下に制限されていない場合は12級7号「肘関節の機能障 害」に該当しませんが,左肘関節痛と手指のシビレについては「局部に 頑固な神経症状を残すもの」として12級13号が認定される可能性が あります。 左肘関節(患側)の主要運動の可動域が,健側(右肘関節)の可動域 の1/2以下に制限されていれば,10級11号「肘関節の著しい機能 障害」として認められる可能性が大です。 尚,左肘.関節の痛みと手指のシビレは原因が同じなので10級に含 まれます。 事例8:交差点の横断歩道を自転車で横断中,右折してきた車に衝突されまし た。右橈骨遠位端骨折で転位のある関節内骨折だったのでプレートで ご呈する手術をしました。リハビリの後に抜釘をしましたが,右手関節 の可動域制限と痛みが残っています。 後遺障害として何級が見込まれるでしょうか。 回答:後遺障害の等級の認定申請するために主治医に後遺障害診断書を作 成してもらってください。 手関節の主要運動は,屈曲(掌屈)・伸展(背屈)があります。 参考可動域角度は ・屈曲 90度 ・伸展 70度 右手関節(患側)の主要運動の可動域が,健側(左手関節)の可動域 の3/4以下に制限されていれば,12級7号「手関節の機能障害」とし て認められる可能性が大です。 尚,右手関節の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。 また,右手関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可動 域の3/4以下に制限されていない場合は12級7号「手関節の機能障 害」に該当しませんが,右手関節痛については「局部に頑固な神経症状 を残すもの」として12級13号が認定される可能性が大です。 右手関節(患側)の主要運動のいずれか一方の運動の可動域が,健側 (左手関節)の可動域の1/2以下に制限されていれば,10級11号 「手関節の著しい機能障害」として認められる可能性が大です。 尚,手関節の痛みは原因が同じなので10級に含まれます。 事例9:雨の降る日に傘をさして道路を横断中,前方不注視の車に跳ねられま した。 右膝の前十字靭帯断裂と診断され,靭帯再建術をしました。 術後にリハビリを8か月しましたが,右膝関節の可動域制限と痛み が残っています。 主治医もリハビリ8か月したので今後症状には変化が見られないと 診断されました。 リハビリ治療の打ち切りは仕方ないのでしょうか。後遺障害はどの 程度が見込まれますか。 回答:前十字靭帯再建手術後にリハビリを8か月されていることから症状 固定の時期と判断されます。 一般的には,前十字靭帯再建術後のリハビリ8か月程度で症状固定 と判断されます。 主治医に後遺障害診断書を作成してもらってください。 膝関節の主要運動は,屈曲・伸展です。 参考可動域角度は ・屈曲 130度 ・伸展 0度 膝関節の患側(右膝関節)の可動域が健側(左膝関節)の可動域 の3/4以下に制限されていれば,12級7号「膝関節の機能障害」 として認められる可能性が大です。 尚,膝の痛みは原因が同じなので12級に含まれます。 また,膝関節の可動域制限が他動値で患側の可動域が健側の可 動域の3/4以下に制限されていない場合は12級7号「膝関節の 機能障害」に該当しませんが,右膝関節痛については「局部に頑固 な神経症状を残すもの」として12級13号が認定される可能性 が大です。 膝関節の患側(右膝関節)の可動域が健側(左膝関節)の可動域 の1/2以下に制限されていれば,10級11号「膝関節の著しい機 能障害」として認められる可能性が大です。 尚,右膝の痛みは原因が同じなので10級に含まれます。 以上 ■ 他の記事を読む■ « 神戸三宮事故